かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

アアガンで夕食を(1)

 

 アアガンで夕食を(1)

7月の終わり頃は南に広がる遠州灘からの湿った風によって、最高の湿気を含んだ暑さに襲われる。朝早くから登った太陽はまるでゆっくりと振る大手をスーパースローモーションで撮影したかのように、日没を焦らしてくる。では夜中は熱帯夜かといえば、そうではない。たいてい気温はスッと引いてすぐに過ごしやすい涼しさになる。よほど風通しが悪くなければ、あるいは雨が降るなどして湿気が高くなければ寝床で眠れずにうなされることもそうそうないだろう。

 このような昼夜の気温差は夏風邪の一因となりやすく、この土地の特殊な気候かもしれない。特殊かどうかについては、私は浜松以外の土地で暮らしたことも、他の土地の気候について見聞したこともないので根拠を持たないが、体調を崩しやすい私にとっては特筆すべき、という意味で特殊という言葉を使いたい。それは「らしさ」を付加するものとして、浜松を象徴してくれる。

 今年もやっとこの部屋に冷房が入るようになった。温度設定は最低の16度にしてあり肌寒さを感じるが、尽くせる贅沢は尽くすのがベストだと思う。長方形の部屋の中央にある長方形の机の上には誰かのノートPCと研究書、資料類とペットボトルが置かれ、PCの目の前に私が座っている。PC作業に目の奥がじんわりと痛むのを感じて室内の所々を見回す。

 部屋の短辺の片側には廊下に面するドアが、もう片側には外に面する窓があり、窓側の壁に接してソファが設置されていて、そこに先輩が仰向けで寝ている。ドアを向いて右手の壁際に本棚には大量の研究室蔵書と雑貨が置かれ、右隅には食器棚、左隅には水道と冷蔵庫がある。シャワーさえ我慢すればここで暮らせる。どうしても風呂に入りたければ、母像に向かってダイブすればいい。いやよくない。そう考えたところで空腹感がやってきた。

 

(解説)文章は原文以上の情報を不可視ながら持つのでは?と思い、書いたもの。