かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

『同志少女』ネタバレ感想:リュドミラへの質問シーンについて

読み終えた『同志少女よ、敵を撃て』を母上に貸してるので記憶を頼りに書くんですが、大体こういった内容でセラフィマがリュドミラに尋ねましたよね。そんで、それはセラフィマが初めて猟銃で生き物を撃った時の心境と同じだと返される。セラフィマは309人を殺したリュドミラにものすごい答えを期待していただけに(ユリアンのこともあり)がっくりしちゃうわけですね。

この、高みに上り詰めた人とその人に憧憬を抱く主人公という関係って、パターンとしてありそうですよね。なんか大人気アイドルとデビューしたてのアイドル同士の会話みたいだなって思いました。そういうシーンに心当たりはありませんが、もしあったら「いい景色だよ」とか言いそうですよね。でもリュドミラはそんなこと言わんのですよ。こんなすごい人だからすごい事を知ってるはずだ、という期待をばっさり。セラフィマとリュドミラの違いは、単に死なずに戦った時間が長いか短いかだけ。

話が飛ぶようですけど、これ私が趣味で乗馬をやってて思うことに近いです。今90鞍、つまりワンレッスン45分を90回乗りましたって言うと、大体すごいねとか言われます。おおよそは何かを続けることが難しい、続けていることがすごい、という意味かもしれません。レッスンが進むと自分の成長に合わせて指導員が内容をレベルアップしていきます。すると、それまで問題なくできていた事が急にできなくなることがあります。馬が言うことを聞かない。そういう時ってほぼ100%乗ってる人に問題があるんですけど、何が悪いのか分からない時って本当に楽しくないし、面白くないし、ひたすらに理不尽でしんどいのです。

そうやって何が楽しくて馬に乗ってたんだっけ?と思った時は、乗ってるだけで楽しかった頃を思い出します。乗ってるだけでテンションが上がっていたんです。その感覚を思い出すと、今の心が当時の心と同期をとってくれます。何鞍乗っても、馬に乗るのが楽しいと感じた私は過去に確実にいて、それと同じようにして今も楽しく乗ることができています。昔の私と今の私の差異は、とんでもない落馬事故などに遭わずに乗ってこられた時間が長いか短いか、ただそれだけなのです。

私はこういう心境なので、リュドミラの言う意味がよく分かるし、挫折しないでおくれセラフィマよ、と思いました。セラフィマはなんか途中から「景色」に気を取られ始めた感があるのですが、それよりも何のために戦うか、敵とは誰なのかを問うことが狙撃兵たる彼女の重要テーマなのですから、やはり「景色」の話はセラフィマの迷いの表れとして登場したんじゃないかなと理解しています。