かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』2章「メンタリング」を読んだ

通常の要約に加え、新たな視点や気付きを与える内容を「ポイント」としてまとめました。

書籍情報

『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』(Camille Fournier=著、及川卓也=訳、2017、オーム社) https://www.oreilly.co.jp/books/9784873118482/

2章 メンタリング(pp.13-33)

2.1 チームの新人に対するメンタリングの意義

  • メンタリングは多くのエンジニアにとって最初の人材マネジメント経験となる
  • 良いメンターの存在は、新人エンジニアのキャリアの方向性を決定づける重要な要素となる

ポイント:

  • メンタリングは「失敗しても首にはならない」という、比較的安全な管理職経験の機会である
  • しかし「最悪の結果」は意外なところにある:組織が優秀な人材を失うことであり、これは深刻な問題である

2.2 メンターの務め

インターンのメンタリング

傾聴

  • 傾聴はメンタリングの基本スキルであり、共感を生む前提条件である
  • 相手の言葉だけでなく、非言語コミュニケーションにも注意を払う必要がある

ポイント:

  • エンジニアは「言語」を扱うことに長けているはずだが、実は「人の言葉を正確に理解すること」は苦手である
  • 技術的な正確さを重視するエンジニアほど、相手の言葉の真意を汲み取ることを軽視しがちである

明確な伝達

  • 複雑な内容は異なる方法で何度か説明し、理解を確認することが重要である
  • ホワイトボードなども活用して、確実な理解を促す

ポイント:

  • メンティーが質問しないことは「理解している」のではなく「質問することを恐れている」可能性が高い
  • 質問攻めにされることを恐れるよりも、メンティーが誤った方向に進むリスクの方が深刻である

自身の対応の調整

  • メンティーの進捗や理解度に応じて、チェックインの頻度や指導方法を柔軟に調整する

ポイント:

  • 「完璧すぎる」成果物も問題になりうる
  • チェックインの頻度は「少なければ少ないほど良い」わけではなく、週1回は維持すべき

新入社員のメンタリング

  • 新入社員のメンタリングは、文書化された手順の提供だけでなく、暗黙のルールや組織文化の伝達も重要である

ポイント:

  • 公式のルール(バケーションポリシーなど)より、非公式のルール(感謝祭後の週は休暇を取らない)の方が重要
  • 新人の「新鮮な視点」は、組織の非効率な慣習を発見するチャンスでもある

技術あるいはキャリアに関わるメンタリング

メンターになったら

  • メンティーに対する期待を明確に伝える
  • 必要な場合は「ノー」と言う勇気を持つ
  • 引き受けた以上は、責任を持って取り組む

ポイント:

  • フォーマルなメンタリングプログラムより、実際の業務の中で自然に発展する関係の方が効果的
  • 見知らぬ人へのメンタリングだからこそ、より率直なアドバイスができる場合がある

メンティーになったら

  • メンタリング関係から得たいものを明確にする
  • セッションの準備をしっかりと行う
  • メンターの時間を尊重する

ポイント:

  • メンターを持つことは「必須」ではない
  • 本当に必要なのはメンターではなく、友人やセラピスト、コーチかもしれない

2.3 すごい上司、ひどい上司――アルファギーク

  • 技術力の高さを過度に重視し、他者の成長を阻害してしまうアルファギークの特徴を警告している

ポイント:

  • 「優秀なエンジニア」であることが、実は「ひどい上司」の原因になりうる
  • アルファギークは若手に「インスピレーションを与える」こともあるが、それは表面的な魅力に過ぎない
  • むしろCTOのような「技術戦略」のポジションの方が適している

2.4 メンターを管理するコツ

  • メンタリングプログラムの成功には、明確な目的設定と適切なリソース配分が必要である

ポイント:

  • 「同類でメンタリング」(女性は女性、POCはPOCなど)という発想は、かえって多様性を損なう
  • メンタリングは「感情労働」として軽視されがちだが、実は採用コストと直結する重要投資である
  • 内向的な優秀エンジニアにメンタリングを任せることで、意外な成長機会になる

2.5 メンターの重要な心得

常に好奇心を絶やさずオープンな心で

  • 新しい視点から学ぶ姿勢を持ち、自身の固定観念や前提を見直す機会としてメンタリングを活用する

ポイント:

  • 「ベストプラクティス」や「失敗から学んだ教訓」が、実は創造性を阻害している可能性がある
  • クリエイティビティは「新しいものを見ること」ではなく、「他人には見えないパターンを見ること」である

相手の言葉をよく聞き、相手の言葉で話す

  • 効果的なコミュニケーションのために、メンティーの理解レベルに合わせた説明方法を工夫する

ポイント:

  • シニアエンジニアの「悪習」は「講義したがる」「議論したがる」ことである
  • チーム開発は「正しさを主張すること」より「相手に理解してもらうこと」が重要

人脈づくり

  • メンタリングを通じて構築される人的ネットワークは、長期的なキャリア成功の基盤となる

ポイント:

  • 「個人の技術的貢献」だけでキャリアを築くことは、実は難しい
  • 内向的な人であっても、意識的な人脈作りは必要不可欠である

2.6 自己診断用の質問リスト

  • メンタリング経験を振り返るための具体的な質問を提示している

ポイント:

  • 「良いメンター」の経験だけでなく「うまくいかなかった関係」からも学ぶべき
  • メンタリングに「正解」はなく、継続的な自己評価と改善が必要

コラム

CTOに訊け:夏期インターンのメンタリング

ポイント:

  • インターンのプロジェクトは「10週間の期間なら5週間で終わる規模」が適切
  • インターンを「忙しくさせること」より「余裕を持たせること」の方が重要

CTOに訊け:インターンシップ制度の導入

ポイント: