かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

読書

社会的マイノリティをめぐる「素朴な感想」のマニピュレーションとその危険性

三木那由多『会話を哲学する』(光文社新書、2022) まずコミュニケーションとマニピュレーションの関係を先に紹介。 話し手が発言をおこない、それによって聞き手とのあいだで共有の約束事が形成されるとき、その発言はコミュニケーションをおこなっている…

【読書】『トランスジェンダー入門』

SNSでトランスの話題をすることが非常に少なくなった。というのも、近年はトランスへの偏見や誤解に基づく時には悪意すら感じるヘイト言説を目にする機会が非常に増えたからだ。特にトランス女性とシス女性の対立構造を煽るようなものにフォロワーの一部が感…

『同志少女』ネタバレ感想:リュドミラへの質問シーンについて

読み終えた『同志少女よ、敵を撃て』を母上に貸してるので記憶を頼りに書くんですが、大体こういった内容でセラフィマがリュドミラに尋ねましたよね。そんで、それはセラフィマが初めて猟銃で生き物を撃った時の心境と同じだと返される。セラフィマは309人を…

『推し、燃ゆ』解説・感想(ネタバレ有) 

解説パート 主人公の高校生・下山あかりの「推し」であるアイドル・上野真幸(まさき)が炎上するところから物語が始まり、炎上した「推し」の芸能活動の動向に、彼を推すあかりは翻弄されていく。大体こんなあらすじです。 この物語はあかりの視点だけで展…

ウマ娘をきっかけにベンヤミン(の解説)を読み始めた

ウマ娘がきっかけで、多木浩二の『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』を読んでいます。 ウマ娘ってどうして面白いんだろうって考えたとき、まず、1回として同じ育成体験がほぼ存在しないことに気付くことができます。 たとえ初期パラメータが同じ…

【読書】三田誠広『日本仏教は謎だらけ』

就活の移動中に三田誠広『日本仏教は謎だらけ』を読み切りました。普段から学術的な文献に触れることが多い自分としては,とても平易な文体で一般向けを意識して書かれているように感じます。著者プロフィールを見ると芥川賞作家で文学部教授とあり,論文検…

Haskell楽しい!!✌(’ω’✌ )三✌(’ω’)✌三( ✌’ω’)✌

とりあえず一章読み終えて記念のGist。 https://gist.github.com/suneo3476/5815057 『すごいHaskellたのしく学ぼう!』という純粋関数型プログラミング言語「Haskell」の入門書を読んでる。訳者の田中英行さんは口説いように「完成度の高い入門書」だと言っ…

福岡伸一『生物と無生物のあいだ』を読みました。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)作者: 福岡伸一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/05/18メディア: 新書購入: 56人 クリック: 1,487回この商品を含むブログ (1115件) を見る 内容と感想 生物学者のDNAにまつわる研究の功績を謎解きのように紹介して…

『論理トレーニング』「第6章 価値評価」メモ

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 産業図書発売日: 2006/11メディア: 単行本購入: 24人 クリック: 182回この商品を含むブログ (90件) を見る 価値評価 「○○は良い、悪い」という価値判断、「○○すべきだ、すべきで…

『論理トレーニング』「第5章 演繹と推測」メモ

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 産業図書発売日: 2006/11メディア: 単行本購入: 24人 クリック: 182回この商品を含むブログ (90件) を見る 演繹と推測の違い どちらも、ある根拠から結論を導く。しかし、両者は…

「ビジュアライジング・データ」3章途中までの感想

ビジュアライジング・データ 「Processingによる情報視覚化手法」という副題がついています。沢山のデータをいかにPresent(提示)するのかがテーマです。情報視覚化のツールとしてJavaベースの「Processing」というソフトウェアが使用されています。軽量で…

Webアプリケーション構築入門@矢吹太郎 レビュー書いた。

Webアプリケーション構築入門(第2版) - 実践!Webページ制作からマッシュアップまで作者: 矢吹太朗,佐久田博司出版社/メーカー: 森北出版発売日: 2011/04/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 9人 クリック: 76回この商品を含むブログ (3件) を見る …

思考の整理学@外山滋比古 前半戦I,II

を書こうとしたんだよ。で、章立てがIからVIまであってさ、じゃーIからIIIまで読んでなんか書くかーつって読んで書こうとしたんだよ。ちょうど3章分で前半だからさ。そのつもりがこんなエントリ一本書いてしまってた。良い感じだったから結果オーライだった…

読書の義務感とはなにか。

いつも感じる 「読書はしなければならない」という意識はどこから生まれてくるんだろうか? そもそも読書の目的がなければ読書さえしないのではないだろうか。たとえば、あなたが「スリル満点の冒険をしているかのような気分を味わいたい」のなら、読書でな…

「弱者」とはだれか@小浜逸郎 内容と感想書いた。

内容 弱者をここでは、差別・被差別の関係からカテゴライズされる人々の事を指す。 社会的弱者について話すときの問題として、話題を出すのがはばかられること、話題を出したとして全般的な解決に向かうことは殆ど無いこと、話題にしなくても自分にはほとん…

ハードを殺して二次元キャラクターは生きられない。

齋藤孝『読書力』を読みました。 内容の紹介 当時42歳の明大文学部助教の人が「若者の読書離れ」に対する憂いと読書の役割を熱弁している。文系っぽい言葉のきつさが印象的。一方で、読書が筆者の人間的要素の形成に大きな役割を果たしている事も理解できな…

二次元を主張する小説こそがライトノベルである。

読書で黙読をする時、頭の中で文章を反芻すると思いますが、その時どんな声が頭にエコーしますか?自分の声ですか?小説ならば語り手のキャラクターの声ですか?評論ならばNHKのナレーターのような声ですか?すべてにおいてはっきりと断定不可能ですが、少な…