かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

初診で行った歯医者の対応がとても良かった

何がとても良かったのかは後で書くので、先に歯の話をする。

 

 

歯の話

この一ヶ月、食事をすると右下奥歯に痛みが走るようになり、我慢できなくなって歯医者に行った。

親知らずは一年前に別の歯医者で抜いたので、虫歯だろうと思っていた。

予約時間通りに診察室に通されると医師とスタッフ達がスピーディーに動いていた。

やがて問診と診察が進み、なんとその親知らずの治療こそが原因だとわかった。

レントゲンによると、歯の底に膿が溜まってしまっていて、当時の処置が甘かったようだ。

定期健診にでも真面目に行っていれば防げたのだろうか。

 

治療法としては、歯の中心から根元に薬剤を注入していく方法を検討しているという。

奥歯を上半分削って「かぶせ」をすることは必須だという。

あとは、保険の効く銀歯と高額なセラミックのどちらにするかの問題だった。

ついでに治療は三ヶ月かかり、根気よく続けなければいけないという。

 

放置するとリスクになることは必須なので、治療はマストだ。

治療法としても奥歯を削ることはショックだが、残念ながらマストだ。

セラミックは多少の金額だったらと思ったが、十万円もするらしいので流石に諦めた。

それでも治るのであれば、三ヶ月など一瞬だ。

一年前には、三ヶ月も泣きながら親知らずを全て抜いたのだ。

何より、ここの医師とスタッフは処置の手が速く、それでいてできる限り痛くないやり方を選んでいることが十五分ほどですぐにわかった。

治療は大変そうだが、ここなら安心して任せてもよいのではないだろうか。

ここまで動揺を抑えながら頭を整理するのに苦労した。

とはいえ、狼狽を見せると医師も困るだろうから、私はできるだけ狼狽を悟られないように、はっきりとした声で治療をお願いしますと告げた。

 

それからも速かった。もう二度通った。

治療は疲れるが、ここで良かったと思う。

 

 

受付の対応が良かった

私が病院で問診票を書くとき、選択肢の分かれる欄が二つある。

一つは氏名の欄で、もう一つは性別の欄だ。

氏名には、通称名と戸籍名のどちらかだ。

性別には、戸籍上の性別と社会生活上の性別のどちらかだ。

歯医者の受付で問診票を受け取った私は、通称名と戸籍上の性別を記載して、提出した。

 

説明しよう。長ったらしいので、文字を小さくしておいた。

まず、私は会社員で、社会保険証を持っている。

その社会保険証の氏名には通称名が記載され、性別には「裏面参照」とある。

裏面の備考欄には、戸籍上の氏名と性別が記載されている。

詳しくは省略するが、厚生労働省の文書を根拠として1〜2か月前に会社に依頼し、実現した。

で、通称名は私が勝手に名乗ると問題だが、保険証の表面にはっきりと記載されているのだから問題ないだろうと考えた。

一方で、性別は医療上の処置のうえで重要な情報になる可能性も考えられるので、医療機関ではいつも戸籍上の性別を書くことにしている*1

何を言いたいのかというと、私は自分が書いた氏名や性別の記載について相手から尋ねられた場合のシミュレーションを、自分の頭の中で毎回行って妥当な説明を導き出しているということだ。

まあまあ譲歩できるラインで。

 

話を戻そう。

しばらくすると呼び出され、受付の看護師に笑顔でこう話しかけれられた。

「気をつかってくださったんですね!」

私「え、どのへんのことだろう?」

「わざわざ戸籍の性別を書いてくださったと思うんですけど、システムに入力したら女性って出てきたんですよ」

私「え、それは一体どこの情報なんです???」

「さあ……でも、あなたはどちらで扱われる方が嬉しいですか?」

このあたりで、この歯科では扱って欲しい性別で扱ってもらうことができるということをようやく理解した。

私「それは……女性ですね……」

それも今の私の状況で。

戸惑いはあったが、それからは看護師と楽に喋ることができた。

 

ここからは私の内面について長ったらしく語るので、文字を小さくしておく。

私は他人と会話する時は常に、その人から存在を訝しがられていないだろうかという不安を抱えている。

ツイッターには攻撃性の塊のようなヘイターがいるので、リアルの場でそういう人と身近に出会ってしまったらどうすればいいのか分からない。

しかし、その看護師は励ましの言葉をかけてくれて、そういう人ではないことがすぐに分かった。

Threads ではたまに、性的マイノリティであることを打ち明けた時のリアクションとして「そうなんだ」と無関心でいてくれる方が嬉しいという意見を目にすることがある。

でも私はこの看護師の対応の方が、多少の気恥ずかしさはあるが、百倍いいなと思った。

無関心というのは、何も思っていないというよりも、何を思っているのか分からないようにするカモフラージュとして映ってしまうからだ。

もちろん、余計なことを言って傷つけないための消極的な選択なのかもしれないが、それは何を言うべきかについて不勉強なのだと捉えた方がよい。

私もさまざまな人間についての不勉強を感じているので、マジョリティだけの課題ではない。

かといって差別心や敵愾心を差し向けられても困るが、そういう時は「傷つきました」と伝えるかもしれない。

 

まとめると、良い対応とは対面している相手に対して前向きな関心を示すことだ。

医者の腕は間違いなく良いが、腕がいいだけなら浜松にはいっぱいいる。

私はその中でも対応の良い病院を選びたいし、良くない病院は今のところ思い当たらないが、選ばないようになるだろう。

*1:仮に戸籍上の性別を変更した場合は、戸籍上の性別を書いておき、問診の際にドクターに事情を説明するだろう。たしかに事情を説明して済むのであれば今の私の懸念は必要なくなる。きっと、生物学的な性別こそが性別だと主張する人は私の対応を称賛するかもしれないが、何にせよ私の選択に委ねられることには間違いないし、誰かに称賛されることは判断軸として使い物にはならない。