かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

石井由香里『トランスジェンダーと現代社会』(明石書店, 2017)

http://www.akashi.co.jp/book/b357457.html


年越しは一冊何か読もうと思って読んだ。
筆者によれば、近代においてアイデンティティの源泉であった性は、流動化している現代の自己像においてその機能を喪失している。多様性を志向する社会運動において、当事者は特定の属性よりも共通する経験において連帯すること(「痛みの共同体」と言っている)が必要になる。あいまいな自己像をもった当事者は近代的価値観と対峙する必要がある。……などなど。
自分は当事者からの聞き取りで、生きづらさの経験を具体的に知ろうとしてきたけど、その生きづらさが社会学的な自己論やアイデンティティの観点からどのように形成されるのかという知見として引用できそう。
序章には性別越境概念について海外と国内の経緯が詳しく述べられていて、わりと知らないことも書かれてあって、ここだけ読んでも勉強になると思う。知識をつけたいという人にはおすすめです。