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かすてらすねお。(hateblo)

見聞録的ななにか。

【感想】7/13劇部コーヒーメーカー&劇団Tips夏季合同公演

内容の性質上、物語の概要に関するネタバレを含みますのでご注意。

投稿後ちょいちょい書き足しています。

概要

  • 劇部コーヒーメーカー「イきたがり」作・演出:星 万莉子
  • 劇団Tips「Bank Bang(!) Lesson」作:高橋 いさを 演出:原賀祐太郎

劇部コーヒーメーカー「イきたがり」

「目を閉じ、耳を…」という言葉が出てきたあたりで『ライ麦畑でつかまえて』を思い出したんですけど、この話は社会に対してああせよこうせよという話ではなくて、自分が何をしたいのかどうするかに終始している。「ゲスの極み」的、エヴァのシンジ君的なメンタリティを感じるけど、彼らは報われないと見せかけてまだ救いようのある人々だから、うまく重ならない。どっちかというと、10年前のVIPスレにいたニートっていうのが近い気がする。しかも彼らって語られてこなかった存在のような気がする。そういう人々にスポットをあえて当ててるのが面白い。

「ボク」と「イ」の字の違う4人の「イきたがり」が出てくるんだけど、彼らってどういう存在なのか考えて見ていた。たぶん意思を象徴するキャラクターなんだけど、ボクがそれらに反発する態度を見ると、少なくともボクの内発的な意思ではない存在(外発的な意思)のようだった。そして彼らはボクに選択を迫るが、ボクは選択を放棄する。さらに「息を吸って吐いていたい」と主張すると、息をするを望む意思としての「息たがり」が登場して、他のイきたがり達は退場する。

一見すると「ボク」は自分の望む意思に選ばれたように見えるけど、あの反応を見る限りでは、実は嫌だったんじゃないかと思う。つまり、自分にとって都合のいい意思などというものは実はどこにも存在しなくって、より良い外発的な意思を選び取ることで妥協することが求められるという現実を認識することがボクには求められていたと思う。

ミサトさんとかアスカとかファンタジーですよ、所詮。みたいな?

バーガーショップの野望が最初に見たコーヒーメーカーの劇だったので、すごい刺激になりました。

劇団Tips「Bank Bang(!) Lesson」

あっこれ、ガキ使のゴレンジャイだって思った。しかも、ただゴレンジャイを芝居でやりたいつって置き換えただけじゃない。ゴレンジャイは、悪役を成敗するはずのヒーロー達が、悪役からコンセプト的な欠陥についてダメ出しをもらって退場していく。しかも、それが毎週繰り返される。ゴレンジャイのエンタメ性の一部は、毎週続けて見ることを前提とした続き物のテレビ番組という形式によって支えられている。いっぽう、一般的に言って芝居は時間と場所が制約される形式だから、同じやり方ではうまくいかない。そこで、登場人物達がよりよい茶番を作ろうとする建設性がポイントになってくると思う。

ゴレンジャイってなんですか?」という衝撃的なお言葉を頂いたので、動画リンクを貼ります。

www.youtube.com

ゴレンジャイもといガキ使はどーせ毎週誰か見てくれるのでぐだぐだとダメ出しするだけでも結構成り立ってしまう。いっぽう、この作品ではもっとリアルでより良い防犯訓練をするために、登場人物達がアイデアを出すし、場合によっては訓練中に独自設定を作り出して、しかもそれがリアルタイムに適用されていく。訓練中に何度も突然始まる「これやっときゃ笑うでしょ」みたいな小芝居たちは全て訓練へのcontributionとして回収されていく。もはや快感でしかない。観客にしてみれば遠慮なく笑えるのだから。

ところで、この作品は銀行の防犯訓練を行員・警備員扮する強盗・一般人扮する客が協力して行っていく話だけど、観客が防犯訓練を面白がる彼らを見て何を楽しむのか考えたい。劇中、登場人物の考え方や登場人物同士の関係性に影響を出さない範囲で繰り広げられる、虚構性の約束された一連のコミュニケーションが、舞台を実験的な空間に作り変える。実験は虚構の空間だからいくらでも過剰になっても、過剰でない現実が約束されている。観客は、過剰になる虚構を過剰でない現実と重ね合わせて鳥瞰視するメタ的な観察主体として作品に参加していく。逆を言えば、むき出しの現実を直視してダメージを負うリスクを負わないエンタメを求める観客に好まれやすい作品構造だと思う。一昨年見た劇部コーヒーメーカーの『ハンバーガーショップの野望』(https://haritora.net/look.cgi?script=2009)と決定的に異なるのはそこになってくる。

 

もちろんボクも楽しかったです。もっとやれーって言えばよかったでんしょうか(笑)

 

 

演劇自体見るのが久しぶりだったけどとても楽しめました。

コーヒーメーカーさんもTipsさんも、これからも演劇に励んでください。