本当は宝島を弾くつもりじゃなかったんだけどな。
好きなグループを作って好きな楽器で好きな曲を演奏してもいいクラス発表会を音楽の授業でやることになったんだけど、そういう時にさっと組める相手の居ない自分は当然一人になった。
かといって不安だったわけでもなく、そういえば自分はピアノ弾けるしなんとかなるんじゃないかな、とか随分のほほんとしていた気がする。
当時は、曲は知っていてもタイトルの知らない曲が随分あった。ちなみにその時弾きたかった曲が何なのかは未だに分からない。
とにかく大野克夫の名探偵コナンのテーマに似たようなピアノソロだけが耳に残っていた。そしてそれをやりたいと思って音楽講師の仕事をしている母親に伝えた。
「宝島が弾きたいんだけど。」
どう考えても宝島ではなかった。
あんたがそういうんなら、と楽譜を用意してもらったが、当時の実力ではピアノソロはまず弾けなかったので、主旋律を右手だけ弾く練習をした。左手の伴奏なし。せめて全音符でいいからコードを軽く抑えておけばよかったのにね。
一方、1〜2ヶ月くらい練習時間になった音楽の授業では、毎回楽譜を持参するのを忘れていた。学校まで来て練習しようというやる気が無かったんだと思う。
なので、毎回「すみません楽譜忘れました」って音楽の先生に言った。ちなみに楽器と曲目は伝えてあったけど特に異論が挟まれることもなく、忘れても意に介さないような反応だったので、色々と都合が良かった。
たしか発表会は保護者参観日で、母親が音楽室にラジカセを持ってきて、出番が来るとMD（知ってますか？）で宝島を流してもらい、それに合わせて弾いた。その時になって左手つけたかったなぁ、ダサいなぁと感じた。
よく考えると、こんな曲クラスの誰も知らないんじゃないか？ と後になって思ったけど、ある子が「あれって宝島だよね？」と尋ねてきたので、知っている人がいたことに安心した。当時も有名曲だったんだろうけど、今でも有名曲なんだからすごいことだ。
ちなみにあれから一度も練習したことがない。でも、和泉宏隆さんの訃報を聞いたので、いい加減練習してみようかなという気持ちになった。良い曲なので。
