今回は、今年の八月に地方新聞に投稿した句(不採用)を自己添削します。
「風死して」は夏の季語。日中の三方原のじりじりとした暑さを表現しています。まだ何も植えられていない畑の作りたての真っすぐな畝(うね)が横に何本も並んでいて、それが奥から手前へとゆっくり波が来ているようだという見え方を詠みました。
この句で動いているものはひとつもないのですが、波のような様子を「動」として、風のない天候の「静」と対比させてみました。「畝立ち並ぶ」という擬人化も「動」と言えそうです。かまぼこ状の畝の形を作ることを「畝を立てる」と呼ぶので、これを擬人化しました。
ところで、「波がうねる」と言う時の「うね」の由来は「畝」から来ているので、その「畝」をわざわざ波のようだなんて言うのは安易だったかもしれませんが、風、畝(土)、波(水)という五行の組み合わせは素敵ではないでしょうか?
さて、このように工夫した句を知り合いに見せると、下五のせいで畑にいるのか海にいるのか分からない、という指摘を頂きました。中七の「立ち並ぶ」で一旦切れているので、「立ち並んでいる畝」と「静かな波」が別々の物として並べられているような印象を与えてしまっています。
季語と取り合わせるモチーフとして畝の存在感をそのままに、その様子が分かるような一工夫が必要でした。上五の季語はそのままで良いとして、中七・下五の十二音を組み立て直す方向でいきます。
まずは波の言葉選びですが、「波打つ」「波描く」「波寄する」などいくつか思いつきます。「漣(さざなみ)」「小波(こなみ)」という言い換えもできそうです。形容詞なら「穏やか」もありですね。
私のイメージに合うのは「波寄する」「漣」「穏やか」あたりでしょうか。場面の問題に対応するために語順の入れ替えて作ってみましょう。
「寄する」案
「漣」案
「穏やか」案
こうして見ると、畝を「や」で詠嘆できた「漣」案は俳句としてのレベルが上がったように思います。そうそう、忘れてたんですけど詠嘆してなかったんですよ。詠嘆すると1勝利点が入るのでこれにしましょう。
添削結果