かすてらすねお。

見聞録的ななにか。

Harbinger/前駆者の日本語訳は「先駆者」でなくてもよさそうだ

最近、マニア心で、英語版ドミニオンのカード名を覚えようとしています。すると、時どき「なんでこんな日本語訳にしたんだろう?」と思うようなものに出会ったりもします。

そういう疑問に自分で答えていこうという趣旨で、前回は拡張の「移動動物園」と収穫祭のカード「移動動物園」の「Menagerie」は別物だということを書きました。

これが思いのほか書いていて面白かったので、そんな調子で、本日は基本セット第二版に新登場した「Harbinger/前駆者」について考えていきたいと思います。

「Harbinger/前駆者」(基本第二版)

Harbinger/前駆者」(基本第二版)

1ドロー・1アクション、捨て札を見て好きなカードを山札の上に置いてもよい、軽いキャントリップ。圧縮が難しければ二枚くらい買っておきたい。

そもそも前駆者という単語を私はこのカードで初めて目にしたんですが、やはり先駆者のことでしょうか。先駆者としなかったのはなぜなんでしょうか。素人考えで「先駆者」の方が分かりやすいじゃんと思ってしまいます。

私が無教養なだけなのを願って、調べていきましょう。

 

検証「Harbinger

 Harbingerハービンジャー)には、①先駆者、先発者、②前触れ、前兆という意味があります。

harbingerの意味・使い方・読み方|英辞郎 on the WEB

  • herbengar……(君主や軍隊の為に)宿を手配するため先に遣わされた者(15世紀後半)
  • herberger……住まいの提供者、宿の主人(12世紀後半)

などの語源があり、「先行して新手の到来を告げるもの」という前触れや前兆といった意味は16世紀半ばに生まれました.

harbinger | Origin and meaning of harbinger by Online Etymology Dictionary

カードアートには、大きな弓を背負って馬に乗った人物が大きく描かれていて、その後ろには丘陵を見下ろせ、多数の旗を持った馬に乗った人々の行列が小さく描かれています。この集団が狩猟隊なのか警備隊なのかは判断できませんが、この人物がこの隊列の先頭にいることは間違いないでしょう。

「Harbinger/前駆者」のカードアート

Harbinger/前駆者」のカードアート

もしかすると、馬そのものにも注目できるかもしれません。Harbingerハービンジャー)とは、名馬として知られるイギリスの競走馬の名前でもあるのです。ハービンジャーは2009年~2010年に活躍し、「Harbinger」が新登場したドミニオン第二版は2017年に発売されました。

ハービンジャー - Wikipedia

このことは、Harbinger の語と馬との結びつきを感じさせます。ただしそれは、語源からして自明のことではありますが。

しかし、ドミニオンがあくまで中世的世界観であることを踏まえると、現代のハービンジャーをもって「Harbinger は馬である」とするのはやっぱり強引です。カードアートも踏まえて、このカートでは隊列集団の先頭人物にフォーカスがあたっていると考えるのが無難でしょう。

 

検証「前駆者」

それでは、「前駆者」は Harbinger の日本語訳として適切なのでしょうか。これが調べてみると、歴史のある言葉だということが分かりました。

前駆とは - コトバンク

(古くは「せんく」「せんぐ」「ぜんぐ」)行列などの前方を騎馬で進み、先導すること。また、その人。さきのり。さきがけ。先駆。ぜんくう。

この「前駆」とはまさに、カードアートの人物そのものを指していると言えます。

使用例を見ると、10世紀には存在していたようですね。

 ※九暦‐九暦抄・天暦三年(949)正月一一日「午終請客使侍従延光朝臣来、即参向、延光時時前駈、拝礼如常」

ここまで見てきたように、「前駆者」と「Harbinger」は意味的にかなり距離の近い語彙であることが分かります。現代では「先駆者」というと「草分け」とか「パイオニア」とか「創始者」のニュアンスがついていますので、それと区別される意味でも「前駆者」は訳語としてかなり適切ではないかと思います。

 

***

 

ここからは個人的な話ですが、前駆者をプレイできる時に限って捨札が一枚も無いことが多い気がします。私のデッキ管理が下手なんでしょうか?

山札に1枚だけ残して残りを捨て札にする「ごみあさり」(暗黒時代)との組み合わせが強そうですし、捨札操作とのコンボを前提に利用するのが良いかもしれません。 

 

とりあえず、私が無教養に過ぎなかったことが判明したので安心しました。本日も学びがありましたね。それではごきげんよう